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釧路地方裁判所 昭和41年(ワ)81号 判決 1968年3月19日

原告

雪印乳業株式会社

右代表者

瀬尾俊二

右訴訟代理人

二宮喜治

被告

釧路市

右代表者

山口哲六

右訴訟代理人

坂本泰良

ほか一四名

主文

原告の請求は、いずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(当事者双方の求める裁判)

一、原告

(一)  第一次請求として、

被告は原告に対し、

金二、八三八、〇五三円、およびこれに対する昭和四二年四月一日から支払いずみまで年五分の割合による金員、ならびに、

昭和四三年三月三一日限り 金一、七五七、三六〇円

昭和四四年三月三一日限り 金 九七〇、八四七円

およびそれぞれに対する右各期限の翌日より支払いずみまで年五分の割合による金員

を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決ならびに仮行為宣言。

(二)  第二次請求および第三次請求として、

被告は原告に対し、

金一、九八六、六三七円、およびこれに対する昭和四二年四月一日から支払いずみまで年五分の割合による金員、ならびに、

昭和四三年三月三一日限り 金一、二三〇、一四六円

昭和四四年三月三一日限り 金 六七九、五九三円

およびそれぞれに対する右各期限の翌日より支払いずみまで年五分の割合による金員

を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決ならびに仮執行宣言。

二、被告

(一)  原告の第一次請求および第二次請求に対する本案前の申立て

原告の訴えは、いずれもこれを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

(二)  本案の申立て

主文同旨の判決。

(当事者双方の事実上および法律上の主張)

第一  原告の主張

一  原告の経歴等

(一) 原告は、大正一四年五月産業組合法により北海道製酪販売組合として資本金五、四五〇円で創立され、バターの製造を開始し、翌大正一五年北海道製酪販売組合連合会に組織が変更され、昭和一六年四月北海道内の他の乳製品会社の事業も総合して、新たに北海道興農公社を資本金一二、〇〇〇、〇〇〇円で設立したが、昭和二二年一月乳製品事業に直接関係のない農地部門を分離して、名称を北海道酪農協同株式会社と改め、その後昭和二三年二月過度経済力集中排除法による指定を受けたので、昭和二五年六月雪印乳業株式会社と北海道バター株式会社(後にクロバー乳業株式会社と商号変更)に分割され、又その後昭和三三年一一月右両会社が合併されて今日に至つているものであつて、現在の資本金は金五、〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇円である。

(二) 原告は、乳製品、飲用牛乳、アイスクリーム、マーガリン等の製造および販売をその事業内容としている。

(三) 原告の釧路工場は、昭和四年一一月釧路郡鳥取村(現在釧路市鳥取町)に工場建設を行なつたのがはじまりで、翌昭和五年六月よりバターの製造を開始し、昭和一一年四月より飲用牛乳の処理販売をも開始したが、昭和一二年一一月現在地である同市貝塚町一二番地に移転し、昭和一六年四月北海道興農公社の設立に伴い、明治乳業株式会社釧路工場を合併して、引き続き乳製品、飲用牛乳等を製造し、又昭和二四年六月アイスクリーム製造販売を開始し、昭和二六年三月にはチーズ、同年五月には育児用粉乳の製造をそれぞれ開始し、昭和三〇年八月にはチーズ製造室を増築することにより各種チーズの製造能力を増強し、更に昭和三六年九月チーズ製造室および醗酵室の増築工場を竣工させ、昭和三九年九月にはアイスクリーム冷蔵庫の増築工事を行ない、収容能力の増強にあてるなど、着実に発展してきたものである。

二、釧路市工場誘致条例の制定と奨励金交付の実態

(一) 釧路市は、昭和二九年九月二二日条例第二六号をもつて釧路市工場誘致条例を制定し、その後昭和三二年六月二四日、昭和三五年三月三〇日、昭和三九年七月四日、および昭和四〇年三月二五日の四回にわたつて同条例を改正した。しかして、右条例は、三条において、「本市は、工場の新設又は増設があつた場合、この条例の定めるところにより次の方法で助成を行なうことができる。(1)奨励金の交付(2)前号の外、工場の新設又は増設についての協力」と規定し、四条において、「奨励金は、本市産業の振興に寄与する事業で、投資額五、〇〇〇万円をこえるものに交付することができる。」と規定し、五条一項において、「奨励金の額は、その工場(工場の増設の場合はその部分)について、当該年度に課された固定資産税の相当額に、次の各号に掲げる割合を乗じて得た額(工場増設の場合は、次の各号に掲げる割合に一〇〇分の七〇を剰じて得た額)の範囲内とし、その期間はその工場が操業を開始し固定資産税を課された年度から三年とする。但し、市長が特別の事由があると認めたときは、更に二年を限つて延長することができる。(1)初年度一〇〇分の一〇〇、(2)次年度一〇〇分の七五、(3)その後の年度一〇〇分の五〇」と規定していた。

(二) この釧路市工場誘致条例によつて被告より奨励金の交付を受けた件数は昭和三〇年度から昭和三九年度までの一〇年間に合計七〇件に及んだが、右条例に定められた基準に適合する限り、これまで奨励金の交付を申請して拒否された事例は一件もなかつた。しかして原告は右期間内に二回の工場増設を行ない、昭和三〇年の増設分について昭和三一年に金二〇六、〇〇〇円、昭和三六年の分については昭和三七年に金八四一、〇〇〇円の奨励金の交付決定を受けた。

三、新設工場の完成

原告は、昭和四〇年九月、主として京浜、京阪方面の市乳の需要に応ずるため、釧路市貝塚町一二番地に牛乳の滅菌工場を新設した。右新設工場は原料乳を釧路市周辺から集乳し、製造するものであり、釧路市の産業の振興に寄与していることは明白である。しかして、右工場の規模および設備の概要は別紙(一)、製品の特性は別紙(二)にそれぞれ記載したとおりである。そこで原告は昭和四〇年一二月二〇日釧路市工場誘致条例七条一項に従い、助成申請書を提出したところ、同日受理された。

四、釧路市工場誘致条例の一部改正

ところが昭和四〇年一二月二八日釧路市議会は釧路市工場誘致条例の一部改正案を議決し、釧路市長は即日これを公布し、右改正条例が施行されることとなつた(昭和四〇年一二月二八日条例第二七号)。この改正の趣旨は、従前行なわれていた工場の新設又は増設に対する助成のうち、増設に対する奨励金の交付を廃止するというものである。なお経過措置として、改正条例附則三項には、「改正前の条例の規定により、昭和四〇年度を初年度として、奨励金の交付の対象となるものについて、なお従前の例による。」と規定されている。

五、奨励金交付請求権の法律的性質

(一) 釧路市工場誘致条例三条は、「……助成を行なうことができる。」、四条は、「……交付することができる。」とそれぞれ規定しているが、これはいわゆる自由裁量規定ではなく、工場の新設又は増設が右条例に定められた基準に適合し、かつ所定の申請書を所定の期間内に提出した者には、右条例に定められた額の奨励金が必ず交付されるべきであつて、この意味で右規定は釧路市長を覊束しているのである。即ち奨励金の交付決定が市長の覊束行為であるか裁量行為であるかは、単に条例の文言からのみ決することはできないのであつて、具体的に条例の趣旨、目的から合理的かつ目的的に解釈されなければならないし、又行政行為の平等原則、法的安全保護の原則に照らし、以下の諸点をも考慮した上決しなければならないのである。

(1) 事業主は、釧路市工場誘致条例に基づく奨励金の交付が受けられるものとして、これを企業採算の基礎に置いて工場の新設や増設を行なうものであるが、右条例に定められた客観的基準に適合する工場の建設がなされたにもかかわらず、市長の恣意により奨励金の交付申請が却下されるとすると、経済界における釧路市の信用は失墜し、釧路市の産業振興を図るという右条例の趣旨に反することになる。

(2) 市長の裁量で奨励金の交付申請が却下されるとすると、条例のもつ法的安全性は全く無視されることになる。

(3) 釧路市工場誘致条例によれば、奨励金交付決定の仕方、交付時期、交付額の算出方式等が具体的に規定されており、かつ過去一〇年間になされた合計七〇件の奨励金交付申請に対し、例外なく奨励金の交付決定がなされている。これらよりみれば、釧路市長がなす奨励金交付決定は単に右条例を具体化し執行するにとどまるのである。

(4) 過去において奨励金交付申請に対し例外なく奨励金の交付決定がなされていたという実態に鑑み、釧路市工場誘致条例に規定されている客観的基準に適合する工場の建設がなされ、かつ適式の助成申請がなされている以上、行政行為の平等原則に照らし、釧路市長は原告に対し、奨励金の交付決定をすべきである。

(5) 奨励金の交付決定をするかしないかが市長の裁量であるとするなら、増設に対する奨励金の交付を廃止することについて釧路市工場誘致条例を改正する必要がなく、すべて市長の裁量権の行使でまかなえたはずである。

(6) 釧路市工場誘致条例施行規則六条は、「条例第四条の基準に該当するものであつも次の各号の一に該当する場合は助成の対象としない。

1公共団体又は公共企業団体が経営するもの。2一の工場における新設又は増設が数次にわたり実施せられるとき。但し、その完成が二カ年以内である場合は、この限りでない。」と規定し、助成しない場合を制限的かつ個別的に列挙している。

以上の諸点を考察すれば、奨励金の交付決定が市長の覊束行為であることは明白である。

(二) それ故に、奨励金交付請求権は、釧路市工場誘致条例に定められている客観的基準に適合する工場の新設又は増設という事実行為の完了によつて当然発生するのであり、この法律的性質は私法上の財産権である。ただ奨励金の額とその交付を受ける期間は、右条例五条により、当該工場に対する固定資産税が賦課された後に具体的に確定するに至るのである。

六、第一次請求について

原告は、昭和四〇年九月中に工場を新設したので、工場新設という事実行為の完了により、被告に対し、工場新設に基づく奨励金交付請求権を取得した。しかして、右請求権の内容は、別紙第三の「新設」の各欄に記載したとおりである。しかるに被告は、本件工場の建設が釧路市工場誘致条例二条にいう工場の新設に当らないとして、右奨励金の支払義務が発生しない旨主張するので、ここに原告は、第一次請求として、被告に対し、右請求権に基づく奨励金交付義務の履行を求める。なお遅延損害金については、奨励金交付請求権の各期限の翌日から支払いずみまで民法所定年五分の割合により、併せてその支払いを求める。

七、第二次請求について

仮に原告の本件工場の建設が釧路市工場誘致条例二条にいう工場の新設に該当しないとしても、同条にいう工場の増設に該当することは明白であるから、原告は、昭和四〇年九月中に工場増設という事実行為を完了したことにより被告に対し、工場増設に基づく奨励金交付請求権を取得した。なお、本件改正条例が公布施行され、これにより工場増設に対する奨励金交付が廃止されたとしても、前叙のとおり、本件改正条例には附則三項が設けられているから、原告が既に取得した工場増設に基づく右奨励金交付請求権は毫も影響を受けない。しかして右請求権の内容は、別紙第三の「増設」の各欄に記載したとおりである。しかるに、被告は、同年一二月二八日本件改正条例が公布施行されたことにより、その支払義務が消滅したと主張するので、ここに原告は第二次請求として、被告に対し、右請求権に基づく奨励金交付義務の履行を求める。なお遅延損害金については、奨励金交付請求権の各期間から支払いずみまで民法所定年五分の割合により、併せてその支払いを求める。

八、第三次請求(損害賠償請求)について

(一) 仮に、奨励金交付請求権が釧路市長の交付決定によりはじめて発生するものであるか、あるいは本件改正条例の施行により消滅したものであるとしても、原告は、昭和四〇年九月本件工場を増設したことにより、釧路市長の交付決定を停止条件として、被告から必ず奨励金の交付を受け得ると期待する法的地位を取得した。しかして、右法的地位は、国家賠償法一条、四条、民法七〇九条の規定により、違法な公権力の行使による侵害から保護されるべき法律上の利益である。

(二) しかるに、被告の代表者である釧路市長は、その職務を行なうについて、故意に原告の右法的地位を侵害して原告に損害を与えた。したがつて、被告は原告に対し右損害を賠償すべき義務を負つている。

即ち、釧路市は、昭和四〇年一二月二八日本件改正条例を公布するに際して、右条例が工場増設に対する奨励金の交付を廃止するものであること、法規の効力は遡及させてはならない大原則があること、原告は本件工場を増設し、同月二〇日釧路市長に対し適式の奨励金交付申請書を提出したものであることをいずれも認識しながら、故らに原告のように既に工場を増設し工場増設に基づく奨励金の交付を受けうる適格を取得した者に対する経過措置を本件改正条例の中に設けることをせず、かつ条例を公布するに際し、地方自治法一七六条、一六条により認められている普通地方公共団体の長の条例再議権即ち拒否権を行使することなく、本件改正条例を公布した。更に釧路市長は、原告がなした右奨励金申請に対し、それが本件改正前の釧路市工場誘致条例の基準に適合しているにもかかわらず、奨励金の交付決定を遷延せしめている間に、工場の増設に対する奨励金の交付を廃止することをその内容とする本件政正条例を公布し、昭和四一年二月一七日これを理由として右申請を却下した。仮に本件改正条例に従えば、原告の奨励金交付申請を却下する以外に方法がなかつたとしても、釧路市長は、前叙のとおり、本件改正条例を違法に公布したことにより、原告の前記法的地位を違法に侵害した上、原告の右申請を却下したのであるから、釧路市長の右却下行為は、本件改正条例の公布行為の違法性を承継しているのである。

これを要するに、釧路市長の違法な職務行為は、

(1) 昭和四〇年一二月二八日になした本件改正条例の公布行為、

(2) 昭和四一年二月一七日になした奨励金交付請求に対する却下行為、

(3) 右(1)および(2)を一連の行為とみての一行為、

の三個の行為であり、右三個の行為のいずれかにより、原告に損害を与えたのである。

(三) しかして、原告は、釧路市長の違法な職務行為により、被告より工場増設に基づく奨励金の交付を受けることができなくなつたのであるから、工場増設に基づく奨励金と同額の損害を蒙つた。損害賠償請求権は釧路市長の違法な職務行為がなされたときに現実に発生し、かつその時に履行期が到来するのであるから、原告は将来の給付請求ではなく現在の給付の訴えとして第三次請求をなすが、計算の便宜上被告に対し期限の利益を与えた上、第三次請求の趣旨として記載したとおりの請求をするものである。

九、以上の理由により、原告は被告に対し、

(一) 第一次請求として、

金二、八三八、〇五三円

昭和四三年三月三一日限り 金一、七五七、三六〇円

昭和四四年三月三一日限り 金 九七〇、八四七円

の工場新設に基づく奨励金、およびそれぞれに対する右各期限の翌日(金二、八三八、〇五三円については昭和四二年四月一日)より支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金。

(二) 第二次請求として、

金一、九八六、六三七円

昭和四三年三月三一日限り 金一、二三〇、一四六円

昭和四四年三月三十一日限り 金 六七九、五九三円

の工場増設に基づく奨励金、およびそれぞれに対する右各期限の翌日(金一、九八六、六三七円については昭和四二年四月一日)より支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

(三) 第三次請求として、

金一、九八六、六三七円

昭和四三年三月三一日限り 金一、二三〇、一四六円

昭和四四年三月三一日限り 金 六七九、五九三円

の損害賠償金、およびそれぞれに対する右各期限の翌日(金一、九八六、六三七円については昭和四二年四月一日)より支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、

の支払いを求める。

一〇、被告の本案前の主張に対する反論

前記五において詳述したとおり、釧路市長は、工場の新設又は増設が釧路市工場誘致条例に定められた基準に適合し、かつ所定の申請書を所定の期間内に提出した者に対しは、右条例に従い、必ず奨励金を交付する旨の決定をすべきであつて、この場合に奨励金の交付をするかどうかの自由裁量権を有するものではない。原告は、昭和四〇年九月に工場の建設という事実行為を完了したことにより、右条例に定められたところに従い、工場の新設に基づく奨励金交付請求権、仮にこれが工場の新設に該当しないとしても、工場の増設に基づく奨励金交付請求権を取得した。しかるに、被告は奨励金の支払義務を負担していないと主張しているのであるから、右奨励金交付請求権の履行を求める本訴請求が訴えの利益を欠いていないことは明白である。

第二  被告の本案前の主張

原告の第一次請求および第二次請求についての各訴えは、いずれも不適法であるから、却下されるべきである。

即ち、奨励金交付請求権は、釧路市長が奨励金の交付決定という自由裁量行為をなすことにより、具体的に確定するのであり、これにより恩恵的に与えられるものにすぎない。つまり奨励金交付請求権は釧路市長の交付決定があつてはじめて権利として存在するようになるのであるが、本件においては、釧路市長が原告の奨励金交付申請に対し交付決定をした事実はなく、又その他の要件もみたされていないので、原告は何らの請求権も取得していない。したがつて、権利を有していないにもかかわらず、司法上の救済を受けることを求める原告の第一次請求および第二次請求についての各訴えは、いずれも訴えの利益を欠くから、不適法である。しかも右のような訴えは、本来釧路市長の自由裁量に委ねられている事項について、釧路市長に奨励金の交付決定をすべきことを強制するという違法性も含んでいる。

第三  被告の本案についての主張

一、原告の主張一の事実のうち、原告が、乳製品、飲用牛乳、アイスクリーム、マーガリン等の製造、販売を事業内容とする会社であること、および原告が釧路市に工場を有することは認めるが、その余の事実は知らない。

二、原告の主張二の事実は認める。もつとも、釧路市工場誘致条例で定められた基準に適合する場合、これまで奨励金の交付申請をして全面的に拒否された事例はなかつたが、励奨金の交付は、申請の都度厳密に審査し、交付決定をしていたのであつて、交付した金額などは必ずしも申請されたものと同じではない。

三、原告の主張三のうち、原告がその主張の日に助成申請書を提出したことは認めるが、原告が滅菌処理工場を新設したとの主張は否認する。

四、原告の主張四の事実は認める。

五、原告の主張五に対し、次のとおり反論する。

(一) 叙上のとおり、奨励金申請があつたものに対して、奨励金を交付する決定をするかどうかは、釧路市長の自由裁量に属する事項である。即ち、釧路市工場誘致条例を解釈するに当たたつては、右条例の文言自体も解釈上重要な要素であるというべきであり、更に奨励金交付制度の趣旨から検討しても、右条例四条に「……交付することができる。」と規定しているところは、釧路市長に奨励金の交付決定をするに当たり裁量権を与えているものと解すべきである。

原告は、市長の奨励金交付決定が覊束行為であることの論拠として縷々主張しているが、これに対し被告は次のとおり主張する。

(1) 一般に企業がある土地に進出しようとする際、重要な要素として考えられるのは、安い工場用地が広く得られるかどうか、労働力が確保し易いかどうか、電力が安く豊富に得られるかどうか、工業用水が豊富であるかどうか、原材料が容易に入手できるかどうか、原材料や製品の運送に便な港湾施設等があるかどうか等であつて、本件奨励金の如き奨励金が交付されるかどうかというような問題ではない。したがつて、奨励金交付決定をなすかどうかが釧路市長の自由裁量に属する事項であるとしても、経済界における釧路市の信用が失墜したり、釧路市の産業振興を図るという釧路市工場誘致条例の趣旨に反するということは考えられないし、又法的安全性を害することにもならない。

(2) 釧路市工場誘致条例において、奨励金交付決定の仕方、交付時期、交付額の算出方式等が具体的に規定されているのではなく、奨励金の交付対象となるもの、奨励金の額の限度、奨励金交付および奨励金交付申請の期限について規定されているにすぎないのである。又過去において奨励金交付申請に対し却下例がなかつたという慣行から、奨励金交付決定が釧路市長の覊束行為であると速断することはできない。即ち、過去における奨励金交付申請は、調査検討の結果すべて右条例所定の要件に適合するものであり、かつ釧路市長が諸般の政策的配慮を行なつた末、いずれの申請に対しても奨励金を交付するのが妥当であるとの判断に達し、予算上の措置を講じた上、交付決定をしたのである。なお奨励金交付の対象となりえないことが明らかなものは、釧路市当局の示唆により奨励金交付の申請手続をとることなく終わつたことも過去において却下例がなかつた原因の一つであるといえる。

(3) 原告が主張する行政行為の平等原則という意味が明確でないが、これにより釧路市長が原告の本件奨励金申請に対し交付決定をなすべき義務を負うものではない。

(4) 確かに、原告の本件奨励金交付申請を却下することはあえて釧路市工場誘致条例を改正するまでもなく、釧路市長の自由裁量により適法にできたわけである。しかしながら、被告としては、本件奨励金交付申請を却下するだけでなく、今後将来に向つて工場増設に対する奨励金の交付自体を全面的に廃止しようというのである。このような重要な政策的措置は、たとえそれが釧路市長の信念に基づくものであるとしても、果してそれが客観的にも妥当なものとして釧路市住民の意思に合致するかどうかについて、市民の代表によつて構成される市議会の判断を仰いだ上、実施するのが妥当である。このような見地から、釧路市長は右条例の改正を市議会に提案したのであつて、奨励金の交付決定をなすについて市長に裁量権が存しないが故に立法措置を講じたのではない。

(5) 釧路市工場誘致条例施行規則六条は、同条例所定の要件をみたし、条例上は奨励金交付申請をなすことが可能であるものについても、同条各号に掲げるものは、釧路市長がはじめから奨励金交付決定をする対象としないことを一般に公示し、無用な交付申請をさせないために設けられているのであつて、これを根拠に市長の交付決定が覊束行為であるというのは誤りである。

(二) 奨励金交付請求権は、基本的には公法上の給付関係における請求権であり、釧路市長の奨励金交付決定によつてはじめて生ずるものであつて、原告が主張するように、工場の新設又は増設という事実の発生により当然に生ずるものではない。奨励金は、工場の新設又は増設のすべてに対して交付されるものではなく、この意味で、奨励金を交付するかどうかは、釧路市長の自由裁量に属する事項である。つまり奨励金交付申請があつた場合には、釧路市長がその実態を審査し、釧路市工場誘致審議会の審議、答申を経て、交付を適当と認めたものについて、更にその工場に課税される固定資産税の納付をまつた上で、最終的に市の予算、政策等を勘案して奨励金の交付決定を行ない、奨励金を交付することになつている。そしてこのこのは、奨励金が釧路市の産業振興を図る目的のために政策的配慮に基づき恩恵的に与えられるものであることに徴すれば、自ら明らかなところである。

六、原告の主張六および七について

原告が工場を新設したとの事実は否認する。前項において述べたとおり、奨励金交付請求権は、釧路市長の奨励金交付決定によつてはじめて生ずるものであつて、工場の新設又は増設という事実行為の完了により当然に発生するものではないから、被告は原告に対し、その主張するような奨励金の交付義務を負わない。

七、原告の主張八について

(一) 原告が昭和四〇年九月本件工場を増設したこと、釧路市長が地方自治法一七六条による付再議権を行使することなく、本件改正条例を公布したこと、その際釧路市が右改正条例は工場増設に対する奨励金の交付を廃止するものであり、かつ右改正条例の公布前に原告の如き本件改正前の釧路市工場誘致条例に基づき奨励金交付申請をしている者がいることを認識していたこと、および原告の本件奨励金交付申請を本件改正条例が施行されたことを理由に却下したことは認めるが、その余の主張はいずれも争う。

(二) 原告の本件損害賠償請求は、まず第一に損害賠償請求が認められるべき被侵害利益が存しないし、次に釧路市長の職務行為に何らの違法がないから、理由がない。

(1) 原告は、本件工場を増設したことにより、被告から奨励金の交付を受け得ると期待する法的地位を取得したと主張する。しかしながら、もともと奨励金は、諸般の政策的配慮に基づき釧路市長の裁量により交付されるものであり、予算上の措置も当初から講ぜられているわけではない。市長が奨励金の交付決定をする以前においては、原告は奨励金の交付を受けうるであろうという単なる事実上の希望を有するにとどまるのであつて、これは法律上保護されるわけではない。したがつて、右希望は損害賠償請求における被侵害利益とはなりえない。

(2) 原告は、釧路市長の職務執行上の違法行為として、第一に、付再議権を行使することなく、本件改正条例を公布したことを指摘する。しかしながら、本件改正条例は、釧路市長自らが適法かつ妥当であると確信して市議会に提案し可決されたものであつて、このような議案についてまで地方自治法一七六条に基づき再議に付すべき法律上の義務が市長にあるとは考えられない。しかして、本件改正条例の公布は、同法一六条に従い適式になされた。なお原告は、本件改正条例の公布が法規不遡及の原則に反するというが、未だ奨励金の交付決定がなされておらず、したがつて奨励金交付請求権が発生していないものについては、法規不遡及の問題は起こりえない。

第二に、原告は、釧路市長の違法行為として、釧路市長の本件奨励金交付申請却下処分を問題にしている、しかしながら、釧路市長は、昭和四一年度を初年度とするものから工場増設に対する奨励金の交付を全面的に廃止した本件改正条例に基づき、原告の本件奨励金交付申請を却下したのであつて、これは市長として当然の措置であり、違法な点はない。

第三に、原告は、右却下処分自体は違法でないとしても、同処分は本件改正条例公布処分の違法性を承継するものであると主張する。しかしながら、本件改正条例は、その内容において何ら違法性がなく、又釧路市長の右改正条例の公布行為にも違法がないのみならず、そもそも条例の公布行為は条例制定という立法過程に附随する行為であり、右却下処分とは次元を異にするものであつて、いくつかの行政処分が相結合して一つの法律効果を生ずる場合に論議されるいわゆる違法性の承継問題は、本件の場合起こり得ないから、原告の右主張は不当である。

以上により、釧路市長の職務行為には、原告が主張するような違法はない。

理由

一  被告の本案前の主張について

被告は、原告は奨励金交付請求権を取得していないから、司法上の救済を受けるに足りる権利がなく、原告の第一次請求および第二次請求についての各訴えは、いずれも訴の利益を欠き不適法であると主張するので、この点について判断することとする。

ところで、第二次請求についての訴えの適否は、本来であれば、第一次請求の当否を判断し、その請求が認容されない場合にはじめて検討されるべきものであるが、後に説示するように、当裁判所としては、原告の第一次請求を認容しないので、ここに便宜上第一次請求の訴えの適否と併せて検討する。

被告は、原告の第一次請求および第二次請求である奨励金交付請求権の不存在を自明の理として原告の訴えの利益を否定するのであるが、そもそも権利の存否は本案の裁判によつてはじめて確定されるものであり、原告が権利と自称するものが法律上保護に値する利益即ち権利である場合には、その権利に関する紛争については、司法上の救済制度である訴訟による解決の道を開くべきであるところ、原告は被告に対し奨励金の交付請求権を有するとして金銭の給付を求めており、その請求権の存否について原告と被告との間に紛争が存在するのであるから、まさに司法上の救済を図る必要があり、原告の訴えの利益は肯定されるべものである。

したがつて、被告の本案前の主張を失当であつて、これを採用することができない。

二  第一次請求および第二次請求について

原告は、第一次請求として、昭和四〇年九月中に釧路市工場誘致条例二条にいう工場を新設したので、工場新設に基づく奨励金交付請求権を取得したと主張し、第二次請求として、仮に右工場の建設が同条にいう工場の新設に該当しないとしても、同条にいう工場の増設には該当するから、工場増設に基づく奨励金交付請求権を取得したと主張する。しかして、原告の右各主張は、奨励金交付請求権は右条例に定められている客観的基準に適合する工場の新設又は増設という事実行為の完了により当然に発生することを前提とするので、まず奨励金交付の法律関係について、考えてみることとする。

事業を援助するためその遂行者に金銭を与える法律関係は一般に贈与であり、贈与契約の申込みに対し承諾することによつて金銭の給付請求権が生ずるわけである。ところで、釧路市工場誘致条例は、一条で、「この条例は、本市に工場を誘致するために、その工場に対して助成を行ない、もつて本市の産業振興に寄与することを目的とする。」と規定し、後に記す四条の規定とあわせて、奨励金の交付が釧路市の産業の振興という行政上の目的に出るものであることを明らかにしたうえ、八条では、「この条例の適用を受ける者が、次の各号の一に該当するする場合は、協力の取消又は奨励金の一部若しくは全部の返還を命ずることがある。(1)第四条に定める工場の基準を欠くに至つたとき。(2)事業を休廃止したとき又はその状態にあると認められたとき。(3)詐偽又は不正行為によつて助成を受け、又は受けようとしたとき。(4)この条例に定める事項に違反したとき。」と規定し、更に七条二項で、「前項の申請事項に変更があつたときは、一月以内にその旨を市長に届出なければならない。」と規定し、「市長は、助成を受けた者に対して必要な調査を行ない又は報告を求めることができる。」と規定して、奨励金の交付について多少権力的制約を加えているが、これらの規定によつても、奨励金の交付が行政権の優越的地位における公権力の発動たる実体を具えているとみるのは困難であつて、その実質は贈与契約とみるべきであろう。ところが、同条例七条一項は、「奨励金の交付を受けようとする者は……申請書を市長に提出しなければならない。」と規定し、同条例施行規則四条は、「市長は……申請書を受理したときは審査……する。」と規定して、奨励金交付の申入れの形式を「申請」としており、同条例の改正に伴う附則(昭和三五年条例第一号、昭和四〇年条例第九号、同年条例第二七号)は、後に記すように、奨励金交付の形式を「決定」と規定しているのであつて、釧路市工場誘致条例は奨励金の交付を形式上公権力の行使としてなす一方的な行為として組立てているものと解される。即ち、奨励金交付の決定あるいは奨励金交付申請却下の決定は、その実質において贈与契約の申込みに対する承諾あるいは拒絶であつて、本来非権力的な作用であるが、条例上形式的には行政処分として構成されているものというべきである。

そして、釧路市工場誘致条例は、その三条(本件改正前のもの)で、「本市は、工場の新設又は増設があつて場合、この条例の定めるところにより次の方法で助成を行なうことができる。(1)奨励金の交付 (2)前号の外、工場の新設又は増設についての協力」と規定し、四条で、「奨励金は、本市産業の振興に寄与する事業で、投資額五、〇〇〇万円をこえるものに交付することができる。」と規定し、五条(本件改正前のもの)はその一項で、「奨励金の額は、その工場(工場の増設の場合はその部分)について、当該年度に課された固定資産税の相当額に、次の各号に掲げる割合を乗じて得た額(工場増設の場合は次の各号に掲げる割合に一〇〇分の七〇を剰じて得た額)の範囲内とし、その期間はその工場が操業を開始し、固定資産税を課された年度から三年とする。但し、市長が特別の事由があるものと認めたときは、更に二年を限つて延長することができる。(1)初年一〇〇分の一〇〇 (2)次年度一〇〇分の七五 (3)その後の年度一〇〇分の五〇」、二項で、「工場の新設でその投資額が一〇億円以上のものについては、前項の規定にかかわらず、議会の議決を経て奨励の方法を定めるものとする。」と規定している。そして七条一項では、「奨励金の交付を受けようとする者は、事業開始の日から三月以内に、協力を受けようとする者は、その都度別に定める申請書を市長に提出しなければならない。」と規定し、これを受けて、同条例施行規則四条では、「市長は、前条の申請書を受理したときは審査し、適当と認めたときは、その工場に対する助成の限度その他必要な条件を付して助成するものとする。」と規定し、更に数次にわたる同条例の一部を改正する条例(昭和三五年条例第一号、昭和四〇年条例第九号、同年条例第二七号)はいずれもその附則二項において、「この条例施行前に奨励金の交付の決定をうけたものについてはなお従前の例による。」と定めている。

これらの規定と前記の奨励金交付の法律関係を考え合わせれば、工場の新設又は増設をした者から市長に対して奨励金の交付申請がなされ、市長がその審査の結果助成を適当であると認めて奨励金交付の決定をしてはじめて、右の者に奨励金交付請求権が生ずるものであることは明らかであり、原告の主張するように、工場の新設又は増設という単なる事実行為の完了によつて当然に右請求権が発生するものとは到底解しがたい。

したがつて、原告の第一次請求および第二次請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも失当として排斥を免れない。

三  第三次請求(損害賠償請求)について

原告が昭和四〇年九月本件工場を増設したこと、釧路市長が同年一二月二八日工場の増設に対する奨励金の交付を廃止することを内容とする釧路市工場誘致条例の一部を改正する条例を公布し、更に昭和四一年二月一七日原告のなした奨励金交付申請を右改正条例が公布施行されたことを理由に却下したことは、いずれも当事者間に争いがない。

そして、原告は、第三次請求として、右工場の増設により、釧路市長の交付決定を停止条件 として被告から必ず奨励金の交付を受け得ると期待する法的地位を取得したが、被告の代表者である釧路市長はその職務行為を行なうについて故意に右法的地位を侵害して、原告に損害を与えた旨主張し、釧路市長のなした本件改正条例の公布行為および奨励金交付申請に対する却下行為を攻撃するから、右各行為が違法であるか否かについて判断する。

先ず、原告は、昭和四〇年一二月二八日に公布された本件改正条例の内容が法規不遡及の大原則に違反するというのである。しかし、釧路市工場誘致条例に定める奨励金は釧路市の産業を振興して住民の利益を増進することを目的とし、市の財源から支出されるものであるから、行財政上の必要に応じ、市議会が右条例を改正し、その定める奨励金交付制度の内容を改め、あるいはこれを廃止することになるのである。したがつてその改廃のあることは当然予測されるところであり、ある者は将来奨励金制度が廃止ないし不利に改められることを予想して工場の増設をさしひかえ、ある者はその存続ないし有利な改正を予想して工場の増設をはじめるであろうが、その改廃により、予期以上の利益を得る場合もあれば、予期した利益を得られない場合もあるわけであり、予期した利益を得られない結果になるからといつて、特段の事情のない限り、市に対してその補填を求め得る筋合ではない。それ故、工場増設に対する奨励金交付の制度を廃止するに当たつては、すでに具体的に発生している奨励金交付請求権は財産権として尊重すべきであるけれども、将来奨励金の交付を受けられるであろうと期待してある種の行為をしたにとどまり未だ右請求権を取得していない者の地位は法律上これを保護しなければならないのではなく、かようなものについて経過規定を設け、特別の取扱いをするかどうかは単に立法政策の問題にすぎないのである。そして前項で詳述したように、奨励金交付請求権は、工場の新設又は増設という事実行為の完了によつて当然に発生するものではなく、奨励金の交付申請に対して市長が審査しその結果助成を適当と認めて奨励金交付の決定をしてはじて発生するものであるところ、右改正条例の附則二項は、「この条例施行前に、奨励金の交付の決定をうけたものについてはなお従前の例による。」と規定して、本件改正がすでに発生している奨励金交付請求権に何らの消長を及ぼすものでないことを定めているのであり、そればかりでなく、その三項で「改正前の条例により、昭和四〇年度を初年度として、奨励金の交付の対象となるものについては、なお従前の例による。」と規定して、未だ交付決定のなされていない工場増設についても、昭和四〇年度を初年度として奨励金交付の対象となるものについては経過規定を設けているのであるから、本件改正条例には法規不遡及の原則に反するというような非難を受けるべきところはない。したがつて、釧路市長が、工場増設について将来奨励金交付を打ち切ることを骨子とする本件改正条例を再議に付することなく公布した行為に、違法な点は認められない。

次に交付申請に対する却下処分の違法性について考察するに、釧路市工場誘致条例五条は、奨励金の額はその工場について当該年度に課された固定資産税の額を基準として決定され、その期間はその工場が操業を開始し固定資産税を課された年度から三年とするものと規定し、地方税法三五九条は「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。」と規定しているので、前記改正条例附則三項の「昭和四〇年度を初年度として奨励金の対象となるもの」とは、昭和三九年中に増設工場を完成している工場を意味するのであつて、原告が主張するように昭和四〇年中に増設工場を完成した場合を定めた規定ではない。したがつて、改正条例によれば、釧路市長は原告の交付申請を却下しなければならないのであつて、右条例に則つてなされた却下処分に違法な点は認められない。

以上の如く、釧路市長の改正条例公布行為および奨励金交付申請の却下処分には何ら違法な点は認められず、又右の一連の職務行為によつて原告の権利が侵害されたものとは云えないのであるから、原告の第三次請求(損害賠償請求)は失当である。

四  結論

以上の次第で、原告の第一次ないし第三次の各請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。(石川 恭 篠田省二 喜多村治雄)

別紙(一)(二)(三)<省略>

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